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2014年9月25日木曜日

833:【iOS】品質と信頼性は直結する〜iOS8.0.1リリーストラブルに見るAppleの根深い問題点〜の巻

日本時間2014年9月25日(木)早朝、iOS8.0にて発生した諸々のバグに対応したと思われるiOS8.0.1が一旦はリリースされたらしい。

「対応したと思われる」「リリースされたらしい」などの推量的な表現とせざるを得ないのは、筆者が実際にその新しいマイナーバージョンアップ版iOS=iOS8.0.1を試す機会を逃したことによる。

何故なら、今回のiOSマイナーバージョンアップには多くの問題を孕んでいたようで、公開から数時間後には配信が停止されてしまったからだ。


iOS8.0.1公開と配信停止

ことの顛末を時間経過と共に追って行くこととしよう。

まずはiOS8.0.1公開直後に更新された、とあるブログ記事より。

「iOS 8.0.1」へのアップデート後に携帯電話ネットワークに繋がらなくなる(圏外になる)不具合が発生 | 気になる、記になる…
こちらの記事が更新されたのは9月25日午前2時37分頃。

iOS8.0.1にアップデートしたiPhone6&6plusにて、携帯電話ネットワークに繋がらなくなる致命的な不具合が出た模様である。

但し、トラブルはそれだけでは終わらない。

【注意】「iOS 8.0.1」にアップデートすると「Touch ID」が正常に動作しなくなる可能性も | 気になる、記になる…
こちらの記事はその更に12分後の午前2時49分頃に更新されている。

鳴り物入りでiPhone5sから搭載された指紋認証システム「Touch ID」が使えなくなるという不具合も併発。まさに「宝の持ち腐れ」状態である。

筆者が確認したところによると、すでにTwitterまとめサイトなどにおいて、実際にiOS8.0.1にアップデートしてしまったiPhone6&6plus利用者の阿鼻叫喚が地獄絵図であるが如く深夜から早朝にかけて繰り広げられており、その様子が手に取るように解る。彼らに何か声を掛けるとしても「御愁傷様です」という言葉以外には思いつかない。

なお、この事態を重くみたのか、多くの問題を孕むiOSを公開してしまったApple社はiOS8.0.1の公開を即座に停止、既にアップデートしてしまった哀れなApple信者に対して、その対処方法を公開している。

「iOS 8.0.1」での圏外とTouch IDの問題、AppleのサポートはiTunesでの復元を勧める | 気になる、記になる…
こちらの記事は午前3時27分に更新されている。

如何にApple社が今回の事態を重く受け止め迅速に対応したのかが手に取るように解るだろう。

いや、別に筆者は今回のApple社の迅速な対応を賞賛しているわけではない。ここまでの問題を引き起こしたのならばとって当たり前の行動であり、ごくごく自然な流れであると感じている。

むしろ危機感を覚えるのは、なぜ故にこのような不具合を抱えたiOS8.0.1を安易にリリースしてしまったのか?という点であり、事と次第によっては、Apple社の抱える病巣は相当根深いものであると言わざるを得ないと考えている。


品質と信頼性の関係

世の中にはいろんな業種がある。物を作るメーカーもあれば、それを仕入れて流通・販売する会社もあり、物ではなくサービスを提供する商売もある。

そのどれにも共通するのは、その企業が提供する物やサービスの価格が供与される内容に対して妥当であるかという点にあると同時に、それらの品質が如何に高いか、その会社の製品やサービスもしくはその企業自体に対してどれだけの高い信頼性を見出すか、ということが重要であり、それらによってその企業の将来の隆盛が決まると言っても過言ではない。

過去にも様々な品質問題が社会を賑わせた。

自動車メーカーや家電メーカーのリコール問題などがそれに該当することは容易に想像できるであろう。特に人命に関わるような不具合を引き起こすケースにおいては、一旦起こしてしまったトラブルに対して、如何に辛辣に誠意を以って迅速に対応するかも企業にとっては重要となる。

判明した不具合の詳細をいち早く世間に公開すると共に、不具合に対する無償修理や製品交換などで事態を終息を図るのは最早常識となりつつある。トラブルを引き起こしてしまった企業にとってはプライド的にも金銭的にも大打撃となり得るが、そもそもの原因がその企業の品質管理や体質によるものである場合には、まさに自業自得と言わざるを得ない。

一方で、その企業自体には致命的な落ち度はないものの、言わば被害者的な立場ながら社会的責任を全うするために行動せざるを得ないケースも存在する。インターネットを介した標的型攻撃や社員もしくは出入り業者による個人情報漏洩や不正取得などのニュースがそれに該当する。

しかし、ここでもトラブル発覚後の対応が重要になる点に変わりはない。人命に関わるような重い事態とは考えにくいものの、今や個人情報は安易に他に漏らしてはならない重要なデータであることに異論はあるまい。例えクレジットカードの番号や銀行の口座情報が漏洩していなくとも、氏名や生年月日・住所のような基本的な属人情報であったとしても、それが決して漏洩してはならない機微な個人情報であると認識しておいた方が無難である。

補償の金銭的な多寡が問題視されるケースもあるが、それよりもまずはその企業自体の問題点を赤裸々に語り、躊躇することなく公衆の面前で平身低頭し謝罪の言葉を述べ、再発防止策などの次の一手を事前に準備するなどの、ある意味「狡猾さ」のような機転が経営を任された者には必要になるのではないだろうか。

とは言え、そもそもが致命的な不具合や重大なトラブルなどは引き起こさない方がいいに決まっている。そのために各企業は自社の製品の出荷前試験を繰り返し、社員教育を徹底しているはずである。

それでもトラブルの発生が止まらないのであれば、それはその企業の品質に対する考えが世の中とは別の方向に向かっているのではないかと危機感を持たねばなるまい。

特にソフトウェアの世界では、そのような自社の製品に対する認識、ユーザーに対する誠意が著しく欠けていると感じることが多々ある。

通常、完璧な製品などという物がこの世には存在し得ないことは理解しているつもりであるが、それでもある程度の要求スペックに沿ったそこそこの製品が世に送り出されるのが普通だ。だがしかし、ソフトウェアには明らかに致命的と思われる不具合を抱えたまま出荷されるケースが後を絶たない。

ソフトウェアも他の製品同様、出荷までのプロセスは以下のような経路を辿るものと推測される。
  • ユーザーの要求内容や企画などからの要件定義
  • 仕様書等に落とし込む設計
  • プログラムコーディングなどの製造
  • そのプログラムのみによる単体テスト
  • 周辺プログラムとの結合テスト
  • 高負荷環境下によるパフォーマンステスト
  • 実機に搭載しての運用テスト
これらの工程を経て、厳重なチェックに見事合格したものだけが製品として出荷されるのが普通だと考えられる。恐らくは上記の各工程間には必ずレビューによるチェックを行われているものと想像できよう。

であるにも関わらず、ソフトウェアにはバグが付きもののようについて回る構図となっている。軽微なものから重大な不具合を引き起こす今回のiOS8.0.1のようなケースまで、そのあり様は様々だ。

一般的な常識として、ソフトウェアにはバグが付いて回るものという認識があることは認めるが、果たしてそれが本来あるべき姿なのかと疑問に思う者がいることも、ソフトウェア開発者や企業は認識しておいた方が良い。


Apple社の抱える問題とは?

それにしても、今回のApple社の出してきたその一つ一つはあまりにもお粗末だ。薄さを追求したあまりに簡単に曲がるスマートフォンを世に送り出してしまった件についてのコメントは未だ明らかになってはいないが、新しいiOSに立て続けに降り掛かる不幸な出来事は、自ら蒔いた種であることに疑いの余地はない。

「ブルースクリーンオブデス」「強制的に復元モード」などiOS 8バグ報告一覧 - GIGAZINE
かつてこれほどまでに完成度の低いiOSが存在しただろうか?

きちんとした検証工程を踏んでいたとしたならば、我々はこれほどの不具合に頭を悩ます必要はなかったのではなかろうか。

かつて1人のカリスマが率いた王国は、そのカリスマを失った後にとある別の1人の男にその後を託すこととなる。

その男は、それまで単体毎にしか機能していなかった組織を有機的かつシームレスに繋げることに腐心したという。

3年かけて生まれ変わった「ティム・クックのアップル」 - ZDNet Japan
カリスマ亡き後の帝国に次々と闇が迫る。その危機感はあるのだろうか。

但し、企業としての体制を整えている間に失ってしまったものはなかったのだろうか?

かつて自社の製品にはかなり厳しい目でチェックを施していたというカリスマは、天国で今のApple製品の惨状をどのようにみているのだろう。

これまで中途半端で不完全な製品など世に送り出したことが稀なAppleが失ってしまったものがそのカリスマ以外にあるとするならば何であろう。

それがもし、本来ならばユーザーに対して保証すべき品質や、自らの絶え間ざる努力の果てに勝ち得るはずの信頼性であるとするならば、今回のAppleが引き起こしてしまった一連のトラブルから類推するに、その病巣はあまりにも深い......。

そこで筆者はあえて警鐘を鳴らすことにした。

カリスマ亡き後のAppleは普通の企業になってしまうのかと恐れていた信者たちも、ここまで落ちぶれることは想定の範疇になかったであろう。非常に残念でならない。

そもそも、きちんとした出荷プロセスが予め厳しく定められており、その全てのプロセスをクリアーした製品であるならば、このような事態には陥っていないはずだ。

その一つ一つが機能していない企業、それが今のAppleなのだ。

残念ながら、筆者は根っからのApple信者ではない。

今から遡ること数年前、たまたまその時代に片手で使えるスマートフォンと呼ばれる製品がiPhoneしか存在しておらず、それを手にした時からの浅いApple製品ユーザーの1人である。

ただ、この短期間でAppleが次々と世に送り出す製品やサービスの虜となった事実は隠せない。だからこそ、あえて苦言を呈するのだ。

Apple社は既に、事の重大さに気づいている。

我々が注目すべきは、冒してしまった過去のミスを振り返ることではなく、今後どのように起死回生のリカバリーショットを放つかである。我々の快適なスマートフォン・ライフは、これから先のAppleの対処如何に掛かっているのだ。

既に新しいマイナーバージョンアップの準備は数日中に公開すべく鋭意進められているようだ。

Apple Says iOS 8.0.2 Update is in the Works, Directs Users to Reinstall iOS 8 - Mac Rumors
早急に対処されんことをただただ願うばかりだ。

今度こそ、我々ユーザーが愛するiPhoneを安心してまともに利用することができる素晴らしいiOSであることを願いつつ、そろそろ今回の考察を終わりにしたいと思う。

なんせ、らしくない言い回しを駆使し過ぎたせいで少々疲弊してしまったもんでね。

ってなことで、今回はここまでっ!

(おわり)

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