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2014年2月10日月曜日

705:【戯れ言】何に価値を求めるか?の巻

最近あったニュースを観てて改めて思ったんだけど、世の中の人々は結構ファンタジックな世界に住む住人が多いんだなぁと、不思議に感じるんだよね。

この場合、果たして「ファンタジック」という表現が適当かどうか判らないんだけど、意外と夢見がちな感じで物事や事象を捉えているんだなぁと、そう思うことが多くてね。

もっと違う言い方をすると、見ず知らずの人やあまり直接的な関係性のない出来事に対して、勝手な妄想や期待を抱いている人が多く見受けられるなぁと、そう思ってしまうことが多くてね。

あんまりボヤけた表現を多用すると話がつまらなくなるから、最近特にそう感じたとある出来事を題材にして話してみようかな。


つい最近発覚して、大々的に報道もされてたゴーストライターの事件を観てて感じた違和感なんかが適当な例だと思うので、その話をしてみようか。

TVのキャスターやらコメンテーターが過剰とも言える演技をしながら「これはトンデモないことです!」とか「これはいただけない。許されないことです!」みたいに発言するのは、とりあえず世間の雰囲気に迎合するためなのか、世論を扇動する意図なのかがよくわからないけど、どうせいつものことだしあまりにもわかりやすいワンパターンだから別にしてね、それ以外の人たちの反応ってのがね、どうも理解できなくて。

たいていの人たちは怒ってるんだと思うんだけど、いったい何に対してそんなに憤っているのかな?

直接的であれ関節的であれ何らかの関係がある人たちなら、それも多少は理解できるっつうもんなんだけど......。

まず、現代のベートーベンと声高々に喧伝させられてたCD販売元とか特集組んでたTV番組の企画した人なんかは「こいつは一杯喰わされたっ!」って怒ってらっしゃるよね。それはまだ解る。己の人を見る目のなさを棚に上げて......なんて言うつもりなんかなくて、相手が一枚も二枚も上手だったんだから、きっとあの場合は誰であっても騙されていたんでしょ。騙された側には落ち度はないと思うんだよね。可哀想に。

それ以外であの事件に憤りを感じている人ってのがいらっしゃるのは認めるけれど、それがどうしてなのか?理由が今ひとつ理解できない。

「嘘をつくことは悪いこと」ってのは理解できてる、子供じゃないんだから。そんなの子供でも解る(ホントは大人にそう言われてるだけでキチンと理解してないケースもある......ってのは今回の主旨から外れるのでこれ以上深くは突っ込まないでください)。

実際にボクは、この件の報道がなされるまであの被曝二世の全聾と言われている作曲家のことは全然知らなかったし、その楽曲すら聴いたこともないんだけど、怒ってる人たちの中には「あの素晴らしい楽曲は、現代のベートーベンが作った作品ではなく、どこぞの馬の骨とも判らない輩が作ったものだったのか!けしからんっ!」って怒ってる人がいるよね、たぶん。

他人に作らせた作品を自分のものとして世間に発表していた嘘に対して怒ってるの?

35歳から突然聾の症状が出たって話の信憑性にすら疑問を抱かざるを得ないことに対して怒ってるの?

それでその作品の価値は落ちるものなの?

何に重きを置いてその楽曲を好きになったの?

結局、その作品そのものの価値なんて無いに等しくて、その曲が作られた背景だとか作者の生い立ちだとかというコンテキストや背後の物語に重きを置くから怒るんじゃないの?

それでその曲自体を聴かなくなるのは気分の問題なのかね?騙されたバカな自分を思い出すから嫌になる?ってとこかね。

他人様の嗜好にとやかく言うつもりはないんだけど、音楽とか文学とか美術というジャンルにおける、いわゆる「作品」と呼ばれるものたちの価値って、まずはその作品そのものに帰属してるのが本来的だと思うんだけどね。

もちろん、有名な人の作品にはそれだけでそれ相応の価値があるとされる点は認めるよ。

でも、それって本当にその作品そのものに価値を見出したんじゃなくて、その作者が作ったという付加価値に騙されてるだけなんじゃないの?

素晴らしい作品を連続で作り続けることはできるだろうけど、中には駄作だってあるじゃない?

そういう「イマイチな作品」にもその作者が著名だという尾鰭が着いてまわるから、作品そのものではなく付加価値の方を重視する傾向にある社会ではたちまち「イマイチな作品」が「素晴らしい作品」へと生まれ変わってしまうんだよね。

でもさ、同じ有名な人の作品でも、似たような作風が続けて発表されたりして飽きたりするじゃない。音楽もそうだし小説とかもそう。そういう感覚って大事だと思うんだよね。作品以外の余計な装飾物に惑わされてないっていうか、その作品と真剣に向き合って評価するっていうかね。

だからね、フィギアスケート男子の高橋大輔選手がこの事件を知った後でも選曲した曲を変更しないって言った理由が素晴らしいと思ったのよ。件の作曲家の作品らしいんだけどね、「曲そのものを気に入って採用ししたので、変えるつもりはありません」ってね。

別に有名な人の作品だからとか、全聾の現代のベートーベンの作品を使ったらどうのこうのとか、打算的なことは一切抜きにしてるってことでしょ?

素晴らしいじゃない。本来はこうありたいよね。

これでゴーストだったライターの人も少しばかり浮かばれるんじゃないかな。自分も共犯者って自虐的になってたけどさ、でも素晴らしいと思われるような作品を作ったんでしょ。そういう風に評価してくれてる人もいるってことで、救われるんじゃないかと。

それにしても、この手の人を騙くらかす商売がなかなかなくならないのも、困ったもんだよね、ホントに。

(おわり)

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