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2013年5月9日木曜日

526:フランスの至宝『貴婦人と一角獣』展に行ってきたので、その作品を独自の視点で解説してみようっ!の巻

毎度どうも、さいたまの孤高のωブロガーこと、ひろさの(@Hirosano)です。

前回のエントリーはホンの序章、プロローグに過ぎません。

真☆煩悩の赴くままに: 525:前回のブログはカモフラージュ?!六本木を訪れた真の目的はこれだったっ!の巻
肝心な核心に触れずに終わるフラストレーションが溜まるエントリーがこちらになりますっ!

今回は、先日行って来ました六本木・国立新美術館にて展示中の『貴婦人と一角獣』展で実際にこの目で観た作品群を、パンフレットに掲載されている文章を勝手に引用しつつご紹介したいと思います。


「貴婦人と一角獣」という作品について


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フランス国立クリュニー中世美術館の至宝「貴婦人と一角獣」は、西暦1500年頃の制作とされる6面の連作タピスリーです。
19世紀の作家プロスペル・メリメやジョルジュ・サンドが言及したことで、一躍有名になりました。
千花模様(ミルフルール)と言われる赤地の布一面に草花があしらわれた様式になっておりまして、全部で6面の構成になっています。

一つ一つは3m四方の大きな作品になっていまして、国立新美術館の大きなフロアーに6作品が見渡せるように扇型に貼り出されていました。

1974年のニューヨーク・メトロポリタン美術館に貸し出されて以来二度目となるフランス国外への持ち出し先が日本になった由来というのにも後々触れていくことと致しまして、まずは国立新美術館での観賞にオススメのスタイルをご紹介したいと思います。


「貴婦人と一角獣」のオススメな観賞の仕方


国立新美術館の2F企画展示室2Eの入口に受付がありまして、そこで音声ガイドの貸出を行なっております。

音声ガイドはヘッドフォンと細長いTVリモコンのような機械を貸し出すシステムになっておりまして、有料(500円)になっています。

作品の細かい解説が音声で聞けますので、有料ですが借りた方がいいかと思います。

理由はそれだけでなく、こちらが決めてとなります。

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なんと、ナレーションがかの有名な声優、池田秀一氏になっているのです。

シャア・アズナブル、いやフル・フロンタルの声で作品の解説が聴けるってだけでも500円を払う価値は大ありですので、観に行かれるガンダムファンの方は必ず企画展示室2E入口で音声ガイドを借りましょう。

男と男の約束ですよっ!!

もちろん女性の方にもオススメです♡

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それでは、この『貴婦人と一角獣』という6枚のタピスリーを展示順にご紹介していきたいと思います。


触覚〜Touch〜


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背筋を伸ばし堂々と立つ貴婦人が、右手で旗竿を持ちながら、左手で一角獣の角に軽く触れています。

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貴婦人がユニコーンの角に触れていることから、作品名は「触覚」となっております。

このように、この『貴婦人と一角獣』の作品群は人間の五感をひとつずつ表す作品となっております。



味覚〜Taste〜


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貴婦人は侍女の捧げる器から右手でお菓子を取り、左手にとまるオウムに与えています。

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手にとまるオウムに砂糖菓子を与える貴婦人の姿から、作品名は「味覚」となっております。

千花模様(ミルフルール)として実在する様々な草花が刺繍として描かれておりますが、多くの小動物も登場しております。


嗅覚〜Smell〜


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侍女が支える皿から花を選びながら、花冠を編む貴婦人。その背後で猿が花の香りを嗅いでいます。

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花を編む貴婦人とその背後で花の香りを嗅ぐ猿の様子から、作品名は「嗅覚」となっております。


聴覚〜Hearing〜


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侍女がふいごを操作し、貴婦人はパイプオルガンを演奏します。オルガンの音に耳を傾ける一角獣と獅子。

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オルガンを奏でる貴婦人と、その音色に耳を傾ける一角獣と獅子の様子から、この作品は「聴覚」となっております。


視覚〜Sight〜


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草地に腰を降ろす貴婦人の膝に、一角獣が前脚をのせ、憩っています。一角獣は、鏡に映る自分の姿に見入っています。

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貴婦人が手にする手鏡の中に映る自分の姿に見とれる一角獣の様子から、この作品は「視覚」となっております。


我が唯一の望み〜Mon Seul Dèsir〜


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青い大きな天幕の前で、宝石を手にする貴婦人。侍女が捧げ持つ小箱から、宝石を選んで身につけるところでしょうか。それとは逆に、身につけていた宝石を外し、箱に戻すところかもしれません。

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これまでの5作品は人間の五感を示すものでしたが、『貴婦人と一角獣』は全部で6面で構成されるタピスリー。最後の1面が何を表すのかは謎です。

これまでの5作品は、この最後の「我が唯一の望み」のためのほんの序章だったとも考えられます。やはり、この作品群は6面で一つの作品になっているんだと改めて感じました。

解説では、この最後の作品の謎には2つの相反する解釈があるとのことでした。
  • 道徳性
  • 宝石をしまう場面と仮定した場合、中世の神学・哲学に照らしてみれば、五感の喜びを超越して自己を制する「心」を表していると言われています。

  • 世俗性
  • 宝石を身につける場面と仮定した場合、宮廷恋愛の文化に結びつけて考えると、五感を通じて愛の感受を司る「心」を表していると言われています。

『機動戦士ガンダムUC』、いやガンダムの一連の宇宙世紀の物語に照らし合わせるならば、6面目の作品は人間の五感を超越した第六感ニュータイプを表しているのではないかと、考えることができます。これはファンなら簡単に想像できますし、ガンダムUCでも意図的にそのように解釈させようとしている気配のようなものを感じますからね。

ですが、この作品の位置付けはそんな単純な話で終わるものではないようです。

ボクがこれらの作品を観て驚いたのは、『機動戦士ガンダムUC』という作品が、実はこの西暦1500年頃に制作された美術品を中心としてアイデアが練られたものではないか?という確信めいたものを感じた点にあります。


作品の謎に迫る


そもそも、この『貴婦人と一角獣』という作品は「西暦1500年頃に制作されたとされている」という曖昧な出自の作品であるのですが、千花模様(ミルフルール)という様式が流行していた時期や登場人物の着用する洋服、また人物の構図が「アンヌ・ド・ブルターニュのいとも小さき時祷書」という西暦1500年頃の聖書に描かれていた絵と酷似していることから、同一の画家の作品ではないかという推測から、制作年代が西暦1500年頃とされているそうです。

そして、この作品の持ち主は誰だったのか?というのも謎になっているそうなんですが、6面全ての作品に出てくる旗がヒントになるんだとか。

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この赤地に紺のラインが入り三日月が並ぶ紋様は、フランスで代々司法官を務めていた由緒正しい家柄のものだそうです。

そして6番目の作品「我が唯一の望み」に描かれる文字。

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作品名である「Mon seul Dèsir」の両脇に一文字ずつアルファベット「A」「I」が余計に描かれています。

このアルファベットこそが持ち主を解く鍵だそうでして、それぞれ人名の頭文字(イニシャル)を表しているとのこと。

このイニシャルが該当することから、この一連の作品の持ち主は西暦1500年頃に実在したル・ヴィスト家の当主であるアントワーヌ二世・ル・ヴィストであるとされています。
  • A
  • アントワーヌ二世・ル・ヴィストの頭文字
  • I
  • その最初の妻であるジャクリーヌの頭文字

はい、ここでピンとこないガンダムファンはいませんよね。

『機動戦士ガンダムUC』の中では、このタピスリーの一つ、「我が唯一の望み」という作品の所有者がヴィスト財団の当主であるカーディナル・ヴィストであることはご存知かと思います。

そう、主人公のバナージ・リンクスの父親ですね。

こんなところに設定の由来があったんですねぇ。

しかもイニシャルの片割れが「最初の妻のもの」ってのがいかにもって感じです。なんせ、バナージはカーディアスの妾の子ですからね。

また、貴婦人や侍女の着ている洋服にも注目して下さい。

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作品中の全てが該当するわけではないですが、何点かの洋服では袖口を折り返して裏地を見せるスタイルになっています。これは西暦1500年頃に流行したスタイルなんでしょうか。

これがまさに再興したネオ・ジオン軍の俗称「袖付き」の由来になっているんじゃないでしょうか。

あのフル・フロンタルの貴族的な衣装(たけちゃんマンっぽいという噂が無きにしも非ず)も中世の衣装をモチーフにしてるっぽいですもんね。

その他、以前のエントリーでも書きましたが、一角獣=ガンダムUC1号機と対になっている獅子がガンダムUC2号機であるバンシィの由来であるなんて容易に想像することもできますので、やはりこの美術品が物語のキーになっているのではないかと妄想が膨らんでしまうのです。

えっ?!

そんなの全部前から知ってたって?!

いやぁ〜、敏感な方はそうかもしれませんね。

今回、ボクは実際に『貴婦人と一角獣』という作品をこの目にするまで気づいてなかったことがかなりありました。観に来た価値は十分にあったと思います。

大満足でした。


そもそも、この『貴婦人と一角獣』という貴重な美術品が遠く日本にまで貸し出された経緯というものが、『機動戦士ガンダムUC』という作品の中にこの実在する美術品が登場するからだ、という事かもしれません。

先ほどまで妄想してきた内容から、作者である福井敏晴氏がこの一連のタピスリーを題材として作品の構想を練っていたのではないか?と思うだけで、実際にこれらの作品を間近で観る価値が何倍にも膨れ上がるのではないでしょうか?

単なるボクの思い込みかも知れませんが、そう思い込んで作品を観ていると不思議な感慨が湧いてきます。

ま、ガンダムUCを知らない方にしてみたら、なんのこっちゃ解らないと思いますけど......。

約2時間ほどじっくりと観賞してきたのですが、まだボクが見落としているポイントがあるかもしれません。

東京では7月下旬まで、その後は大阪にてこの作品を実際に目にすることができるそうなので、ガンダムファンの方々はもちろんのこと、そうでない方もぜひご自身の目でこの作品に直に触れることを大々的にオススメして、今回は終わりにしたいと思います。

なお、作品に直に触れると言っても、実際に手で触れたりするとこっぴどく怒られますので、ご注意下さい。

ってなことで、今回はここまでっ!

(おわり)

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